800画報アニメ観戦記
アニメの感想とか近況報告
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TVアニメTARITARIの全般的な感想。
P.A.WORKSのオリジナルアニメは安定して面白いねー。とくに今作は爽やかな青春の匂いのする良い作品でした。
9月終了作品の中では氷菓の次に良かったかな。
振り返ってみて面白いなと思うところは、物語全体で明確な目標設定がされないまま物語が進行していたところ。最終的に「歌うことって楽しいね」がテーマだと分るのだけど、部活アニメ=大会優勝が目標という安易な目標設定をせずに、歌う事にテーマをフォーカスした脚本は凄く良かった。
特に一番話数を割いた和奏のエピソードは、和奏自身の葛藤や和奏を見守る周りの人々を丁寧に描いていて素晴らしかった。
ただ、話数的に仕方の無いことだけど他の合唱部メンバーのエピソードももうちょっと深く掘り下げられたら良かったかなと思う。せっかく高校3年の1年間を描くというストーリー構成なんだしね。
作品ファン的には文化祭~卒業式のエピソードも見たかったし……。
まぁこればかりは仕方ないというか無いものねだりなんだけど。
作画も終始安定していてさすがPAWORKSといった感じ。関口さんキャラデザの女の娘たちがみんな可愛くて素敵だったね。
キャラクター同士の掛け合いの面白さ・細かさもこの作品の魅力になっていて、紗羽が来夏と和奏とで接し方が違ったり、合唱部女子の姦しさに男子が蚊帳の外だったり、ウィーンにナチュラルに嘘を付き続ける来夏だったり、とにかくキャラクターの性格設定がしっかりしていた印象。
それとメールでのやりとりをきちんと文面で表現していた所も強く印象に残った。(女子メールのあの独特な感じを再現してるのは驚いたわ。)
また、作品のキモになる合唱パートも各声優さん達の歌声が見事で脚本・演出の盛り上がりに上手くフィットしていて良かったな。サントラ買いたい!
この作品でも主要キャラが魅力的だったので氷菓に続いてキャラ語りをしていきたいと思います。
序盤のクールな優等生風の雰囲気もどこへやら、後半アホの子ということが判明しどんどん可愛くなっていったね。
特に母親のトラウマを克服した6話以降はキャラクターとして生き生きとして、合唱部のメンバーとも馴染んでいく姿は成長を感じさせる良いキャラクターだったと思います。
12話ラストでの笑顔は心が震えたなー。
橋本監督的にはこの作品は合唱部が主人公との事なんですが、個人的にはこの子が主人公だったと思う。
1話での和奏との問答でも分るとおり、この娘はバカだけど最初から歌うことの楽しさを理解していて、持ち前の明るさと天然っぷりでパワフルに合唱部の面々を引っ張っていたからね。
来夏がバカなりに一生懸命考えて行動していく姿は、観ていて凄く安心感がありました。
で、そんな来夏の操縦方法を誰よりも心得ていたのが紗羽。
4話で方向性のブレた来夏を敢えて叱る場面なんかは名コンビっぷりを強く感じたなー。
それとこの娘はアニメキャラにしては珍しいくらいの人間関係の立ち回りが上手かった。
来夏のやりたい事を暗黙のうちに汲み取ったり、和奏のトラウマを察して負担にならない距離をとったり、大人たちにどういう態度で説得すればいいのか心得ていたり、とても器用だった。
唯一、年相応の子供っぽい態度をとっていた相手が父親だったのがなんとも面白い所。
紗羽は最終回で単身海外に行きますがきっとこの娘なら上手くやっていくんだろうなと想像できます。
あと、セリフには出さないけど所々の所作が自分のスタイルの良さを自覚してる感があってとてもエロかったです。(特にダンスがエロくてい素敵だった。)
合唱部男子チームは話数圧縮の影響を受け、エピソードが少なくなっちゃったのが残念。
最初は1歩離れた位置から合唱部を見守っているという感じだったウィーンも10話以降合唱部に打ち解けてきていたし、田中が紗羽に惚れるしで文化祭以降は男子達にもエピソードがありそうなもんだったんだけど……。
あと田中はひたすら女子チームから罵倒されるという羨ま……悲惨な目にあってたのが印象的だったわ。
P.A.WORKSは、次回のオリジナル企画にも期待したいです。花咲くいろはの映画も楽しみ。
それでは、また次回。
P.A.WORKSのオリジナルアニメは安定して面白いねー。とくに今作は爽やかな青春の匂いのする良い作品でした。
9月終了作品の中では氷菓の次に良かったかな。
振り返ってみて面白いなと思うところは、物語全体で明確な目標設定がされないまま物語が進行していたところ。最終的に「歌うことって楽しいね」がテーマだと分るのだけど、部活アニメ=大会優勝が目標という安易な目標設定をせずに、歌う事にテーマをフォーカスした脚本は凄く良かった。
特に一番話数を割いた和奏のエピソードは、和奏自身の葛藤や和奏を見守る周りの人々を丁寧に描いていて素晴らしかった。
ただ、話数的に仕方の無いことだけど他の合唱部メンバーのエピソードももうちょっと深く掘り下げられたら良かったかなと思う。せっかく高校3年の1年間を描くというストーリー構成なんだしね。
作品ファン的には文化祭~卒業式のエピソードも見たかったし……。
まぁこればかりは仕方ないというか無いものねだりなんだけど。
作画も終始安定していてさすがPAWORKSといった感じ。関口さんキャラデザの女の娘たちがみんな可愛くて素敵だったね。
キャラクター同士の掛け合いの面白さ・細かさもこの作品の魅力になっていて、紗羽が来夏と和奏とで接し方が違ったり、合唱部女子の姦しさに男子が蚊帳の外だったり、ウィーンにナチュラルに嘘を付き続ける来夏だったり、とにかくキャラクターの性格設定がしっかりしていた印象。
それとメールでのやりとりをきちんと文面で表現していた所も強く印象に残った。(女子メールのあの独特な感じを再現してるのは驚いたわ。)
また、作品のキモになる合唱パートも各声優さん達の歌声が見事で脚本・演出の盛り上がりに上手くフィットしていて良かったな。サントラ買いたい!
キャラクター語り
この作品でも主要キャラが魅力的だったので氷菓に続いてキャラ語りをしていきたいと思います。
坂井 和奏
序盤のクールな優等生風の雰囲気もどこへやら、後半アホの子ということが判明しどんどん可愛くなっていったね。
特に母親のトラウマを克服した6話以降はキャラクターとして生き生きとして、合唱部のメンバーとも馴染んでいく姿は成長を感じさせる良いキャラクターだったと思います。
12話ラストでの笑顔は心が震えたなー。
宮本 来夏
橋本監督的にはこの作品は合唱部が主人公との事なんですが、個人的にはこの子が主人公だったと思う。
1話での和奏との問答でも分るとおり、この娘はバカだけど最初から歌うことの楽しさを理解していて、持ち前の明るさと天然っぷりでパワフルに合唱部の面々を引っ張っていたからね。
来夏がバカなりに一生懸命考えて行動していく姿は、観ていて凄く安心感がありました。
沖田 紗羽
で、そんな来夏の操縦方法を誰よりも心得ていたのが紗羽。
4話で方向性のブレた来夏を敢えて叱る場面なんかは名コンビっぷりを強く感じたなー。
それとこの娘はアニメキャラにしては珍しいくらいの人間関係の立ち回りが上手かった。
来夏のやりたい事を暗黙のうちに汲み取ったり、和奏のトラウマを察して負担にならない距離をとったり、大人たちにどういう態度で説得すればいいのか心得ていたり、とても器用だった。
唯一、年相応の子供っぽい態度をとっていた相手が父親だったのがなんとも面白い所。
紗羽は最終回で単身海外に行きますがきっとこの娘なら上手くやっていくんだろうなと想像できます。
あと、セリフには出さないけど所々の所作が自分のスタイルの良さを自覚してる感があってとてもエロかったです。(特にダンスがエロくてい素敵だった。)
田中 大智とウィーン
合唱部男子チームは話数圧縮の影響を受け、エピソードが少なくなっちゃったのが残念。
最初は1歩離れた位置から合唱部を見守っているという感じだったウィーンも10話以降合唱部に打ち解けてきていたし、田中が紗羽に惚れるしで文化祭以降は男子達にもエピソードがありそうなもんだったんだけど……。
あと田中はひたすら女子チームから罵倒されるという羨ま……悲惨な目にあってたのが印象的だったわ。
P.A.WORKSは、次回のオリジナル企画にも期待したいです。花咲くいろはの映画も楽しみ。
それでは、また次回。
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TVアニメ 人類は衰退しましたの全般的な感想。
僕としては久々に最後までみたラノベ原作アニメ。佳作として十分楽しめるアニメだったように思います。
とにかく主人公の”私”と妖精さん(もしくは珍妙な出来事)とのやり取りが面白く、引き込まれる作品でした。”私”が不可思議な現象と絶妙な距離感を保ちつつ的確な角度からツッコミを放っていく様は、まるでアウトボクサーかのごとく蝶のように舞い蜂のように刺すといった様相でした。
中原麻衣さんもこの珍妙なヒロインをよく演じきったと思います。
また、基本的に支離滅裂なことしか言わない妖精さんを演じた変声声優(超褒め言葉です。念の為)の皆さまにも賛辞を送りたい。というか変声声優大集合すぎて大興奮ですよ。
ただちょっと勿体無いなと思ったのは、エピソードの話数振り分けと順番。つまりストーリー構成について。
基本的に短編の連続となっているので大枠でのストーリーは無くていいんだけど、ちょっと尺に収まりきってないかな?というエピソードや時系列をずらす意味が薄いエピソードが散見されてうーんという感じ。
とくに最終回に最過去の学舎時代の話をもってきたのは失敗だったように思う。(しかもそのエピソード自体が尺足らずになっているし……)
原作で他にどういうエピソードがあるか分らないけど、もう少し妖精さんが絡む話を主に持ってきたほうが面白かったかな、と。
最終回らしさを演出するために学舎のエピソードを持ってきたように感じたけど、この作品に整合性は必要ないんでそういう配慮は別にいらないかな。どうせ最終的に人類は衰退していくわけだし。
というわけで、今からこの作品を視聴しようと思う方は順番を気にせず面白いエピソードを拾ってみてくのががよろしいかとー。
個人的なお勧めは、「ひみつのこうじょう」と「じかんかつようじゅつ」かな。あと1話完結のエピソードも好きです。
それでは、また次回。
僕としては久々に最後までみたラノベ原作アニメ。佳作として十分楽しめるアニメだったように思います。
とにかく主人公の”私”と妖精さん(もしくは珍妙な出来事)とのやり取りが面白く、引き込まれる作品でした。”私”が不可思議な現象と絶妙な距離感を保ちつつ的確な角度からツッコミを放っていく様は、まるでアウトボクサーかのごとく蝶のように舞い蜂のように刺すといった様相でした。
中原麻衣さんもこの珍妙なヒロインをよく演じきったと思います。
また、基本的に支離滅裂なことしか言わない妖精さんを演じた変声声優(超褒め言葉です。念の為)の皆さまにも賛辞を送りたい。というか変声声優大集合すぎて大興奮ですよ。
ただちょっと勿体無いなと思ったのは、エピソードの話数振り分けと順番。つまりストーリー構成について。
基本的に短編の連続となっているので大枠でのストーリーは無くていいんだけど、ちょっと尺に収まりきってないかな?というエピソードや時系列をずらす意味が薄いエピソードが散見されてうーんという感じ。
とくに最終回に最過去の学舎時代の話をもってきたのは失敗だったように思う。(しかもそのエピソード自体が尺足らずになっているし……)
原作で他にどういうエピソードがあるか分らないけど、もう少し妖精さんが絡む話を主に持ってきたほうが面白かったかな、と。
最終回らしさを演出するために学舎のエピソードを持ってきたように感じたけど、この作品に整合性は必要ないんでそういう配慮は別にいらないかな。どうせ最終的に人類は衰退していくわけだし。
というわけで、今からこの作品を視聴しようと思う方は順番を気にせず面白いエピソードを拾ってみてくのががよろしいかとー。
個人的なお勧めは、「ひみつのこうじょう」と「じかんかつようじゅつ」かな。あと1話完結のエピソードも好きです。
それでは、また次回。
TVアニメ 氷菓の全般的な感想です。
まぁーーよく出来た作品でした。2012年4・7月スタート作品のなかでは一番といっていいと思います。
5話までは謎演出・冗長な脚本・どこか古臭いキャラクター設定となんとも不安定な出来だったんですが6話以降それら全ての不安定要素が改善されうなぎ登りに面白くなっていきました。
さてこの作品、表面上は日常のささいな謎に名探偵・折木奉太郎が挑むという誰も死なないミステリーの体裁をとっているわけですが、作品全体としては一貫してある心情的なテーマを描き続けた作品だったように思います。
僕なりの言葉でそのテーマを言い表すなら「現実との対峙」という感じ。
外側から見れば美しいファンタジーで済む話を、千反田えるの好奇心を原動力に奉太郎の推理が現実を剥き出しにする。
「英雄に守られた文化祭」、「クラス全員で協力した映画制作の成功」、「漫研のゴールデンコンビ」……それらは全て他者が都合良く捉えたファンタジーでしかなく、実際には実務的な力学で構築された冷たい現実でしかないのだ。
作品のキャラクター達・そして視聴者である僕らが夢想するファンタジーが崩れ無慈悲な現実が顔を出したときのあの何ともいえない感覚。虚脱感と寂しさと諦めとその他諸々がない交ぜになったあの感覚をこの作品は強く訴えてきます。そうしてそういった現実を直視することで人は成長していくんだというメッセージを感じました。
ただ、無慈悲に冷たい現実を提示するなかに少しだけ最後に希望を混ぜてくる辺りにスタッフ(もしくは原作者)の優しさを感じました。
理想的ではなくとも助け合う姉妹の姿や、陸山から田名辺へ送られた笑み、そして最終回に奉太郎が口にする「ところで……」というセリフ。
現実はシビアで夢はないけど、そんなに捨てたもんでも無いよという世界の捉え方に僕は共感しました。
シビアすぎず甘くない。そんなちょうど良い温度が伝わる作品だったと思います。
さて、初期段階ではなんとも不安定なキャラクター達でしたが回を重ねるごとに非常に魅力的になったように思います。
特に千反田さんに関しては名実ともに作品の原動力として魅力的な言動を振りまいていました。「私、気になります!」のセリフも本編中に弄られるほど上手く板につき作品を自然に動かす上で非常に重要な役割をこなしていました。
奉太郎との関係や千反田さん自身の事情が掘り下げられる18話以降は当然として長編エピソードとなる”愚者”と”クドリャフカ”においての(ほとんど本編と関わりの無い)はっちゃけっぷりは見事としか良い様が有りません。
またそのはっちゃけぶりを遺憾なく発揮した後に、正月・雛祭りでの「名家の一人娘」を演じる千反田さんをみせたのは非常に上手い構成だなと感心しました。
あの極端な2面性と最後の千反田さんの独白がこの作品の最後に提示される現実であり、視聴者の幻想した、おしとやかでありつつも無邪気で奔放な千反田える像を打ち砕くのです。
千反田さんに振り回された名探偵・折木奉太郎も成長型の主人公として上手く描かれていました。
最初期において嘘をついてまで千反田さんを遠ざけようとした”省エネ主義”が各エピソードをこなすにつれ緩やかに解けていき、あの最終回のセリフに繋がる様は作品のテーマを体言した良い主人公っぷりだったと思います。(ところで”省エネ主義”という言葉にどうしょうもない古臭さを感じるのは僕だけだろうか?まぁ原作の執筆時期を考えれば仕方ないのだけど……。)
自称DBこと福部里志に対する初期の印象は鼻持ちなら無い親友キャラだなという感じだったんだけど、”クドリャフカ”以降はなんとも人間味のある良いキャラになった気がします。
奉太郎に期待せざるを得ないという立ち位置が凡人である僕らと被るのが主因でしょうか。(ただし里志には可愛い幼馴染の彼女がいるのだ!彼の対場は決して凡庸などでは無い!)
また個人的にはチョコレート事件の際に里志が言った「勝ちに拘りすぎると勝っても面白くないんだ」というセリフはとても好きです。僕も面白く勝ってこそ意味があると思っているので。
で、その里志の彼女こと伊原摩耶花。とにかく最初から最後まで奉太郎と里志に対する態度が180度違うというぶれない娘でしたねぇ。巫女姿を見られた時のリアクションの違いがとくに印象的。
個人的には里志に対する好意を隠さないラブい態度よりも、奉太郎に対するそっけないサバサバした態度のほうが好きです。マゾですか?マゾですね。
それと特別にサブキャラクターとして取り上げたいのは入須先輩。
えーとゆかな声の権謀術数・小悪魔お姉さまキャラってもうズルイです。トリプル役満かって感じですよ。一生騙されていたい。
演技面に関して。
古典部男子メンバーの中村さん・阪口さんはお馴染みの演者でありさすがの演技力だったわけですが、女子メンバーに関して僕は新鮮な驚きを感じました。
千反田役の佐藤聡美さんはこの作品で初めて認識しましたが、声質・演技ともに非常によくマッチしていて好演だったように思います。
千反田さんのおしとやかなんだけどフワフワとして落ち着かない、かつ芯のある人物像が上手く伝わってきました。
また摩耶花役の茅野さんは初めてエンドロールで確認したときは目を疑いました。印象的にもっとアニメアニメした声の人だと思っていたので、こういう声質の演技もできるんだと驚き感心しました。僕としてはこっち方面での演技のほうが好みなので今後もこういう役が増えるといいな。
作画・画面について。
さすがの京アニ。僕はけいおんを観て無いので久々の京アニ作品だったんですがまぁやっぱ画面のクオリティが全然違いますね。この質を22話維持してかつ、最終回でさらに上げてくるんだから恐ろしい。
僕は画面の質と作品の質は比例しないという持論を持っているので作画だけが良い作品は評価しないようにしています。
しかし、内容が充実した作品にこれだけの画面を付けられるとグゥの音も出ませんね。
内容が同程度に詰まった作品であれば当然画面のクオリティ勝負になってくるわけで、今年のアニメレースでこれをどう評価していくか非常に悩ましいです……。
意外と長くなってしまった……。
まぁとにかく今年放映された作品のなかで間違いなく見といて損しない、というか見ないと損な部類の作品なのでお勧めします。
それではまた次回。
総評と作品テーマについて
まぁーーよく出来た作品でした。2012年4・7月スタート作品のなかでは一番といっていいと思います。
5話までは謎演出・冗長な脚本・どこか古臭いキャラクター設定となんとも不安定な出来だったんですが6話以降それら全ての不安定要素が改善されうなぎ登りに面白くなっていきました。
さてこの作品、表面上は日常のささいな謎に名探偵・折木奉太郎が挑むという誰も死なないミステリーの体裁をとっているわけですが、作品全体としては一貫してある心情的なテーマを描き続けた作品だったように思います。
僕なりの言葉でそのテーマを言い表すなら「現実との対峙」という感じ。
外側から見れば美しいファンタジーで済む話を、千反田えるの好奇心を原動力に奉太郎の推理が現実を剥き出しにする。
「英雄に守られた文化祭」、「クラス全員で協力した映画制作の成功」、「漫研のゴールデンコンビ」……それらは全て他者が都合良く捉えたファンタジーでしかなく、実際には実務的な力学で構築された冷たい現実でしかないのだ。
作品のキャラクター達・そして視聴者である僕らが夢想するファンタジーが崩れ無慈悲な現実が顔を出したときのあの何ともいえない感覚。虚脱感と寂しさと諦めとその他諸々がない交ぜになったあの感覚をこの作品は強く訴えてきます。そうしてそういった現実を直視することで人は成長していくんだというメッセージを感じました。
ただ、無慈悲に冷たい現実を提示するなかに少しだけ最後に希望を混ぜてくる辺りにスタッフ(もしくは原作者)の優しさを感じました。
理想的ではなくとも助け合う姉妹の姿や、陸山から田名辺へ送られた笑み、そして最終回に奉太郎が口にする「ところで……」というセリフ。
現実はシビアで夢はないけど、そんなに捨てたもんでも無いよという世界の捉え方に僕は共感しました。
シビアすぎず甘くない。そんなちょうど良い温度が伝わる作品だったと思います。
キャラクター語り
さて、初期段階ではなんとも不安定なキャラクター達でしたが回を重ねるごとに非常に魅力的になったように思います。
特に千反田さんに関しては名実ともに作品の原動力として魅力的な言動を振りまいていました。「私、気になります!」のセリフも本編中に弄られるほど上手く板につき作品を自然に動かす上で非常に重要な役割をこなしていました。
奉太郎との関係や千反田さん自身の事情が掘り下げられる18話以降は当然として長編エピソードとなる”愚者”と”クドリャフカ”においての(ほとんど本編と関わりの無い)はっちゃけっぷりは見事としか良い様が有りません。
またそのはっちゃけぶりを遺憾なく発揮した後に、正月・雛祭りでの「名家の一人娘」を演じる千反田さんをみせたのは非常に上手い構成だなと感心しました。
あの極端な2面性と最後の千反田さんの独白がこの作品の最後に提示される現実であり、視聴者の幻想した、おしとやかでありつつも無邪気で奔放な千反田える像を打ち砕くのです。
千反田さんに振り回された名探偵・折木奉太郎も成長型の主人公として上手く描かれていました。
最初期において嘘をついてまで千反田さんを遠ざけようとした”省エネ主義”が各エピソードをこなすにつれ緩やかに解けていき、あの最終回のセリフに繋がる様は作品のテーマを体言した良い主人公っぷりだったと思います。(ところで”省エネ主義”という言葉にどうしょうもない古臭さを感じるのは僕だけだろうか?まぁ原作の執筆時期を考えれば仕方ないのだけど……。)
自称DBこと福部里志に対する初期の印象は鼻持ちなら無い親友キャラだなという感じだったんだけど、”クドリャフカ”以降はなんとも人間味のある良いキャラになった気がします。
奉太郎に期待せざるを得ないという立ち位置が凡人である僕らと被るのが主因でしょうか。(ただし里志には可愛い幼馴染の彼女がいるのだ!彼の対場は決して凡庸などでは無い!)
また個人的にはチョコレート事件の際に里志が言った「勝ちに拘りすぎると勝っても面白くないんだ」というセリフはとても好きです。僕も面白く勝ってこそ意味があると思っているので。
で、その里志の彼女こと伊原摩耶花。とにかく最初から最後まで奉太郎と里志に対する態度が180度違うというぶれない娘でしたねぇ。巫女姿を見られた時のリアクションの違いがとくに印象的。
個人的には里志に対する好意を隠さないラブい態度よりも、奉太郎に対するそっけないサバサバした態度のほうが好きです。マゾですか?マゾですね。
それと特別にサブキャラクターとして取り上げたいのは入須先輩。
えーとゆかな声の権謀術数・小悪魔お姉さまキャラってもうズルイです。トリプル役満かって感じですよ。一生騙されていたい。
その他雑感
演技面に関して。
古典部男子メンバーの中村さん・阪口さんはお馴染みの演者でありさすがの演技力だったわけですが、女子メンバーに関して僕は新鮮な驚きを感じました。
千反田役の佐藤聡美さんはこの作品で初めて認識しましたが、声質・演技ともに非常によくマッチしていて好演だったように思います。
千反田さんのおしとやかなんだけどフワフワとして落ち着かない、かつ芯のある人物像が上手く伝わってきました。
また摩耶花役の茅野さんは初めてエンドロールで確認したときは目を疑いました。印象的にもっとアニメアニメした声の人だと思っていたので、こういう声質の演技もできるんだと驚き感心しました。僕としてはこっち方面での演技のほうが好みなので今後もこういう役が増えるといいな。
作画・画面について。
さすがの京アニ。僕はけいおんを観て無いので久々の京アニ作品だったんですがまぁやっぱ画面のクオリティが全然違いますね。この質を22話維持してかつ、最終回でさらに上げてくるんだから恐ろしい。
僕は画面の質と作品の質は比例しないという持論を持っているので作画だけが良い作品は評価しないようにしています。
しかし、内容が充実した作品にこれだけの画面を付けられるとグゥの音も出ませんね。
内容が同程度に詰まった作品であれば当然画面のクオリティ勝負になってくるわけで、今年のアニメレースでこれをどう評価していくか非常に悩ましいです……。
意外と長くなってしまった……。
まぁとにかく今年放映された作品のなかで間違いなく見といて損しない、というか見ないと損な部類の作品なのでお勧めします。
それではまた次回。